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本編もさることながら、メイキングで泣きました。
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アーティスト
6月12日。真夏のような暑い、熱い土曜日だった。

私はある病院のホスピス病棟のイベントに、大学生のアカペラサークルを紹介した。約1月前に1人の学生に声をかけたら、サークル内でメンバーを募ってくれた。集まったのは13人。
当日は私も立ち合って道案内をしたり、看護婦さんを紹介したりして、彼らを見守った。

学生たちを集めて看護婦さんが話す。
「ホスピスってどういう所か皆さんは知っていますか?
入院しているのは全員癌の患者さんで、ほとんどの人が1週間か1か月後には亡くなっていきます。
私たちは患者さんの痛みを緩和したり、スピリチュアルペインをケアしたりしています。
そのことをしっかり胸に置いて歌を歌ってもらえれば、どんな歌をどんな気持ちでどんなトーンで歌えばいいかがわかると思います。
では、楽しみにしていますね。よろしくお願いします。」
みるみる学生たちの顔が強張っていく。
緊張していくのがわかった。
しかし彼らの瞳はとてもまっすぐで真剣だった。

いったいどんな顔をして歌えばいいのだろう。
自分たちの歌が患者さんたちに伝わるのか、励ますことができるのか。
不安いっぱいのまま、集まった患者さんたちの前で歌を歌い始める。
曲によって人数編成を変え5曲。彼らは歌いきった。
最後の曲はたくさんの拍手と手拍子の中に終わり、患者さんもその家族も花道を去っていく学生たちもみんな涙を流していた。

患者さんも家族も最後の楽しみだったとそれに感謝し、学生たちは暖かい手拍子で歌を聴いてくれた患者さんに感謝をする。歌を通じてお互いの心と心が共鳴したのを感じた。
今日この瞬間をみんな生きていた。本当に素晴らしい瞬間だった。

歌を歌う者として、人が人に想いを伝える、ちゃんと伝わるということがどういうことなのか、改めてわかったような気がした。
プロということを頭に置いたら、技術も大切だけど本当に大切なことは音をと通して繋がろうと思うことかもしれない。

生前、マーヴィン・ゲイがこう言っていたのをふと思い出した。

―アーティストとは、人々を美しい心に導くことができる者だ―


学生たちの歌は、その日そこにいた人たちみんなの心を美しくした。



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